
子供の成績や能力を伸ばしてやるには何かよい方法はあるのだろうか、という疑問に対して、特効薬的な明確な答えはないといえるでしょう。
ですが、子供の接し方や言葉のかけ方など、日々の生活の中で常に意識しながら改善していくことで、大きな変化が見られることは間違いありません。
単に、塾に行かせたからといってそれだけですぐ何とかなるというものでもないのです。
そのあたりのことをこの機会に何回かに分けて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
子どもとの上手なつきあい方
私が塾講師を始めてもうかれこれ今年でちょうど32年ほどになり、その間、実にいろいろな子供や保護者の方々とお付き合いさせていただき、さまざまな事例を見てきました。
その中で、勝手ながら保護者の方を大きく大別すると、次のようなグループに分かれているようです。
【4つのタイプ】
① 教育熱心で、子供に小さいころから勉強させ、高学歴を狙わせる
② 教育熱心だが、あまり勉強、勉強とは言わず、割りあい本人まかせ
③ 教育に関心はあるが、小さいうちは体をしっかり鍛え、本格的な勉強は中学になってから
④ 放任主義だが、成績には一喜一憂し、場当たり的に子供をしかる。
必ずしもこれに当てはまるかどうかは別として、一見したところ①が理想的なように思えますが、成功するかどうかは極端な結果が出ています。
①のタイプでうまくいっているのは、子供に○○中学、△△高校というような「目標」だけでなく、勉強の「目的」と「将来の展望」をイメージさせながらうまくコミュニケーションがとれた場合でしょう。失敗するケースは、勉強そのものが目的になってしまって、自分が何のためにしんどい勉強をしているのかわからなくなってしまう場合です。
もし、万一受験に失敗すれば、その後は親のコントロールはほとんど利かなくなってしまい、中には暴走するケースもあります。小学校のときはあんなに優秀で賢かったのに、中学受験に失敗して、荒れ出した・・・という例もいくつか見てきました。
②のタイプ。なぜかこのタイプの親御さんの子供で急激に伸びるケースが非常に多いのです。
③のタイプの場合でもうまく実力をつけて伸びる子供も多いのですが、本人の自主性を尊重しながらも放任せず、うまく方向づけして子供のお尻を押してやる②のタイプが、よく伸びる子供を育てる土壌になっているようです。
1つのケースですが、以前教えていた生徒で、非常によくでき、がんばる子がいました。やがてその子は東大寺学園高校に合格し、その後は京大法学部に合格しました。実はその子の2つ年下の弟が入塾してきたとき、この子も兄に負けず劣らずできるなと直感しました。
その子もやがて、同じ東大寺に合格し、その後は神戸大学経済学部に合格しました。そして彼らの育った環境はやはり②のタイプのようです。
③のタイプは、①と同様、極端な結果が出ます。小学校の基礎学力がしっかり身についている場合は、中学からの勉強もスムーズに行え、うまくいくことも多いのですが、逆に小学校の基礎学力が不足していると、多くの場合、手遅れに近い状態になっています。
そこから成績を上げていくには本人もさることながら、親も意識改革して、相当な「工夫」と努力をしていかねばなりません。多くの親御さんは、小学校のときは中くらいだと思っていたわが子が、中学になって中以下になっている現実を見てあせってしまうのです。
そこで、事態をさらに悪くしてしまうのが「成績が悪いから勉強しなさい」と、日ごろ口先の注意ばかり言ってしまうことです。
④のタイプは、親の都合でしかられたり勉強させられたりで、子供にとっては大変迷惑なことで、子供は混乱し、やがてあまり親の言うことも聞かなくなってしまいます。
いかがでしょうか?
少しでも心当たりがあるところもあったのではないでしょうか。
子供は塾や学校で過ごしている時間より、家庭の中で過ごしている時間のほうがずっと長いのです。
ですから家庭環境や親が子供に普段無意識のどのように接しているかで、驚くほどその後に影響を与えています。これは決して本人の能力云々だけの問題ではないのです。
では、どのように接していくのがよいかという問題ですが、ひとつだけはっきりしていることがあります。
それは・・・
「子供を他の何ものかとの【比較】によって、しかったりほめたりしない」
ことです。
これは非常に多くの子供と親御さんをじっくり観察してきてわかったことですが、とても大切なことです。